AID POLICY / GOVERNANCE援助政策・ガバナンス

課題認識

2024年に70周年を迎えた日本のODA。この間、開発援助の国際潮流や日本の役割は大きく変化してきました。2023年には、世界が複合的な危機に直面する中、開発協力大綱が8年ぶりに改定され、2015年に国連で採択された「持続可能な開発目標」(SDGs)は目標年(2030年)まで半分が経過しました。ODA中心の協力、援助国政府と被援助国という従来型の関係でなく、先進国と開発途上国の対等なパートナーシップに基づく相互協力、そして民間部門や地方自治体も含めた協力をいかに推進するかが問われています。一国の制度整備・運営を支援するガバナンス分野の協力も、引き続き重要です。これまでの協力を振り返り、今後の開発協力の在り方を考える重要性が高まっています。

IDCJの強み

「開発の理論と現場をつなぐ」-IDCJは日本初の開発・国際協力分野専門の総合的なシンクタンクとして、新しい援助潮流に対応するパイオニアの役割を担ってきました。例えば、援助協調についてタンザニアを中心に援助の現場で得た知見を15年以上にわたり発信し続け、インドネシアではJICAのSDGs支援第1号案件を実施しました。各国の援助動向調査や、日本の過去の協力を総括する調査(ベトナム、マレーシア、インドネシア等)も、多数行ってきました。

ガバナンス分野では、行政能力強化、公共財政管理などに取り組んできたほか、平和構築、ジェンダー主流化の分野でも豊富な活動実績があります。さらに近年ではスポーツと開発の分野にも取り組みを広げています。

主な実績

インドネシア国「持続可能な開発目標(SDGs)実施体制強化プロジェクト」(JICA委託)

2015年9月の国連持続可能な開発サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs: Sustainable Development Goals)」では、各国は、17の目標(ゴール)と169のターゲット達成のため、行動計画を策定し、進捗状況をモニタリングすることが求められています。2017年のインドネシア政府の発表によれば、SDGsの241のグローバル指標のうち、①国内指標の設定が可能な指標は85、②代替指標候補がある指標は76、③未確定指標は75、④インドネシアには関連しない指標は5でした。つまり当時インドネシア政府が対応できる指標は約36%であり、残りの指標(②及び③)への対応を検討することが必要となっていました。インドネシア政府は2017年7月に公布したSDGs実施に関する大統領令において、①国内指標の設定、②指標達成のための行動計画策定、③モニタリング・評価体制の構築を推進する方針を示し、国家開発企画庁(BAPPENAS)はこれを実現すべく、SDGs実施に向けた取組を進めてきました。

IDCJは、JICAの委託を受け、2017年からインドネシア政府のSDGsへの取組を支援する調査を実施しSDGsのターゲット・指標設定や行動計画策定・モニタリングを支援しました。本プロジェクトでは、同調査で得た課題・教訓を踏まえて、1)インドネシア政府によるSDGs国内指標の定義及び計測方法の確立、2)中央政府及び5つの対象州政府によるSDGs実施のための行動計画策定、3)中央政府及び対象州政府によるSDGsのモニタリング・評価の実施・報告、4)SDGs実施の取組に関する相互学習(現地セミナー)の実施を行いました。

2023年12月からは、本プロジェクトの成果を活用・普及しつつ、特に課題として残っている地方政府のSDGsに関する政策立案・実施・モニタリング・評価体制の強化ならびにマルチセクターパートナーシップを促進するため、インドネシア国「持続可能な開発目標(SDGs)地方実施体制強化プロジェクト」を実施しています。

アチェ州地方開発企画庁(BAPPEDA)でのSDGs地方行動計画の策定及びモニタリング・評価支援

東ティモール国「日本のODA事業の足跡に関する情報収集・確認調査」(JICA委託)

日本の東ティモール国への開発協力は、2002年5月に同国が独立する前の1999年から行われており、同国にとって日本は、約20年の歴史があるODA供与国です。本調査は、同国に対するODA事業等(JICA及び外務省事業を含む)を振り返り、それらの協力の成果・インパクトを確認・整理し、東ティモールの社会・経済発展への貢献度合いを明らかにすること、対東ティモールODA事業等全体の成果を取りまとめ、対外的に発信すること、今後の東ティモールへのODA事業等の協力の方向性について示唆を提示すること目的に実施しています。

これまでIDCJは、ベトナム、マレーシア、インドネシアにおいても同様の調査を実施しました。

現地調査で訪れた、JOCVの派遣実績のある聖心ベコラ小学校・高等学校
現地調査で訪れた、JOCVの派遣実績のある聖心ベコラ小学校・高等学校。東ティモールへのJOCV派遣は2010年から始まり、2021年までに合計116名が派遣されています

大洋州地域(ソロモン・パプアニューギニア)公共投資/公共投資管理(JICA委託)

ソロモン諸島では、公共投資が必ずしも「国家インフラ投資計画(2013-2023)」に基づかず都度個別判断が行われており、国家開発戦略に基づいた予算策定の強化や、財務省による各省庁の予算規律の強化が必要とされていました。特に、事業申請・評価・選定・モニタリングのフローを確立し、適切な経済評価分析に基づく事業評価・選定を行うことが課題となっていました。パプアニューギニアでは、財政赤字の中で支出削減、公共投資の抑制が求められる中、公共投資プログラムの事業計画・審査・選定・モニタリング・評価において、申請書類の不備や、職員の案件審査知識・能力不足が課題となっていました。

こうした背景から、両国の公共投資管理分野の能力強化を図るため、本支援が開始しました。具体的には、ソロモン諸島では、1)財務省の公共投資事業評価・選定に必要な経済評価分析能力が向上するとともに、2)公共投資管理枠組、政策、ガイドライン、テンプレートが草案・承認され、3)公共投資管理委員会を通じて公共投資管理枠組が始動・運営され、4)公共投資管理政策・ガイドラインに沿って事業の審査、選定、モニタリングが適切に実施されるため、支援を行っています。現在、契約延長を通じてプロジェクトを実施中です。

パプアニューギニアでは、1)国家計画モニタリング省の事業審査・選定能力が強化され、2)ライン省庁の事業申請能力が向上し、3)国家計画モニタリング省のモニタリング・評価能力が改善されることを目的に支援を行いました。現在は後継プロジェクトを実施中です。

財務省によるホニアラ道路工事の事業モニタリング
(ソロモン諸島)

その他実績

援助政策

ガバナンス

平和構築・ジェンダー ・スポーツ

関連リンク

開発コンサルティング

株式会社 国際開発センター