INDUSTRIAL DEVELOPMENT産業開発

課題認識

産業開発は、途上国の経済成長の原動力となるものです。産業開発が幅広いセクターと関わり、より高い付加価値と雇用を創出し、社会の安定を保つことによって、経済成長が実現されていきます。現在、途上国においてもデジタルトランスフォーメーション(DX)による新しい経済・産業社会が生まれようとしています。こうした状況に応じた産業基盤の整備や人材育成を進める必要があります。また近年は、途上国が外国直接投資に力を入れ、日本企業も途上国を有望市場として事業展開しています。民間セクター開発や民間連携を促進することによる持続的な経済成長への期待が高まります。

IDCJの強み

IDCJは、産業開発セクターにおいて、アジア・アフリカ・中南米の世界各地での産業振興に関わる各種調査の実施や産業人材の育成に携わっています。最近は、アフリカや中近東の投資促進に関わる業務や地域観光開発、アセアン諸国での高度産業人材の育成に重点的に取り組んでいます。また、JICAの民間連携事業にも世界各地で積極的に参画しています。

主な実績

キルギス国「チュイ州世界遺産を活用した地域開発・観光促進プロジェクト」(JICA委託)

キルギス共和国は中央アジアの山岳国で、2024年の人口は約680万人です。国土の約40%が標高3,000メートルを超え、北東部には巨大なイシククル湖、南部国境には天山山脈が連なります。雄大な自然景観が観光の中核資源となる一方、シルクロードの遺跡や遊牧文化など、多彩な歴史・文化資産も豊富に残っています。

JICAはこうした自然と歴史文化の両方を活かし、チュイ州で多様かつ持続可能な観光を実現することを目指して、キルギス政府と協力し「チュイ州 世界遺産を活用した地域開発・観光促進プロジェクト」を進めています。

チュイ州にはユネスコ世界遺産「シルクロード:長安‐天山回廊の交易路網」を構成するアク・ベシム遺跡、ブラナの塔、クラスナヤレチカ遺跡の三つの資産が存在します。とりわけアク・ベシム遺跡では、2016年からキルギス国立科学アカデミーと日本の帝京大学・龍谷大学による共同発掘が続けられ、古代都市スイアブの姿が徐々に明らかになっています。

プロジェクトでは、2025年12月を目標にチュイ州全体の観光開発マスタープランを策定するとともに、複数のパイロットプロジェクトを同時進行で実施しています。具体的には、アク・ベシム遺跡の遺跡公園化、ブラナの塔博物館での陶芸体験プログラム、地元産いちごを使った観光農園でのいちご狩り体験、そして多民族が暮らすクラスナヤレチカ村でのホームビジットと多民族フェスティバルなどです。

これらの試行的な取り組みから得られた知見や教訓は、マスタープランへ逐次反映されます。観光による地域経済の活性化と文化遺産の保護が両立する仕組みを確立し、チュイ州の観光セクターが自立的に発展できる土台を築くことが最終的な目標です。

国際開発センター(IDCJ)はプロジェクトの中核メンバーとして、関係機関や地域コミュニティと緊密に連携しながら、歴史遺産と自然資源を結び付けた魅力的な観光ルートを創出し、地域住民が主体的に参画する体験型プログラムを拡充することで、観光収益が地域振興と遺跡保護に循環する未来を描いています。

世界遺産「シルクロード:長安-天山回廊の交易路網」の構成資産の一つであるアク・ベシム遺跡 (スイヤブ) を観光客の訪れる場所にすることも目指している

インドネシア国「ガジャマダ大学フィールドリサーチセンターにおけるオープンイノベーション促進を通じた産官学地連携拡充プロジェクト」(JICA委託)

インドネシア国ジョグジャカルタ特別州のクロンプロゴ県に、円借款事業により建設されたガジャマダ大学フィールドリサーチセンター(FRC)の施設・設備を活用し、大学・地域産業者・地方政府・コミュニティが連協・協働して社会経済課題の解決に取り組むための能力強化プロジェクトに取り組みました。

 活動内容は、FRC内に設置されたファブラボ(FabLab)を適切に活用出来る人材を育成することを目的としたデジタル製作技術研修の実施、FabLabに必要な機材の調達支援、概念実証(PoC: Proof of Concept)に係る活動の支援、産官学地協働の支援の4つです。

デジタル製作技術研修は、大学の教員が、米国MIT発の研修プログラム「ファブアカデミー」を受講することを技術面・資金面から支援しました。受講者は、国際水準のデジタル製作技術を修得すると共に、世界のFabLab関係者とネットワークを構築しました。

 PoCでは、地方政府・企業・関係機関・学生等の参加によるアイディアソン(Ideathon)を開催し、3つのテーマ(スマート農業、乳製品加工、森林資源リサイクル)について課題解決を図るべく、協働でプロトタイプのデザインに取り組みました。そのデザインに基づいてプロトタイプ製作に取り組んだ結果は、地方政府・大学・地場産業・コミュニティに対し、セミナーの場で発表・共有されました。このような取り組みの経験をふまえ、ガジャマダ大学のFRCを拠点に、引き続き産官学地が連携を拡充し、ジョグジャカルタ地域の社会経済課題の解決に取り組んでいく主旨の共同宣言が行われました。

また、クロンプロゴ県に新設された国際空港の周辺地域を対象に、ジョグジャカルタ特別州が構想を策定した「エアロトロポリス開発計画」においても、ガジャマダ大学FRCの機能を活用し、地域の社会経済課題解決の活動展開を拡充するプログラムが含まれることになりました。このように、ガジャマダ大学FRCが地域の課題解決において、今後も重要な役割を果たしていくことが期待されています。

プロトタイプ製作について話し合う教員と学生達
バリで開催されたファブラボ世界会議「FAB17」参加
ガジャマダ大学フィールドリサーチセンター(ジョグジャカルタ特別州クロンプロゴ県)

その他実績

DX・イノベーション

観光開発・ツーリズム

金融、 貿易・投資促進

産業振興・人材育成

外国人材支援

開発コンサルティング

株式会社 国際開発センター