産業開発は、途上国の経済成長の原動力となるものです。産業開発が幅広いセクターと関わり、より高い付加価値と雇用を創出し、社会の安定を保つことによって、経済成長が実現されていきます。現在、途上国においてもデジタルトランスフォーメーション(DX)による新しい経済・産業社会が生まれようとしています。こうした状況に応じた産業基盤の整備や人材育成を進める必要があります。また近年は、途上国が外国直接投資に力を入れ、日本企業も途上国を有望市場として事業展開しています。民間セクター開発や民間連携を促進することによる持続的な経済成長への期待が高まります。
IDCJは、産業開発セクターにおいて、アジア・アフリカ・中南米の世界各地での産業振興に関わる各種調査の実施や産業人材の育成に携わっています。最近は、アフリカや中近東の投資促進に関わる業務や地域観光開発、アセアン諸国での高度産業人材の育成に重点的に取り組んでいます。また、JICAの民間連携事業にも世界各地で積極的に参画しています。
ペルーには、アンデス文明およびスペイン植民地時代の遺跡が全国に数多くあり、これら豊富な文化遺産や自然の観光資源を活用した観光産業が盛んです。
ペルー北部のアマソナス州ウトゥクバンバ渓谷上流地域は、クエラップ遺跡を始めとした文化史跡や多様な文化に基づいた伝統的な生活様式・風景が渓谷一帯に無数に存在しています。2017年3月にロープウェイが完成して以来、クエラップ遺跡へのアクセスが向上し、観光客が急増していました。一方で、現地の観光関連企業も十分に成長しておらず、観光商品やサービスの供給は不足している状況で、COVID-19の影響や地震・大雨などによる被害も受けています。そのため、文化・自然遺産を保全・活用しつつ、観光関連ビジネス振興を両立する持続可能な観光開発モデルの構築が求められています。
日本は、この地域において、屋根のない博物館をコンセプトとするエコミュージアム手法を用いた持続的な観光開発モデルの構築に取り組んでいます。IDCJは、2019年4月から本プロジェクトに携わっています。2022年は観光開発モデルを検証するためのパイロット活動の準備に取り組んでいます。また、文化省や州政府の行政職員の景観保全及び観光産業振興の能力強化も行っています。
モーリシャスは、西インド洋、マダガスカル沖に浮かぶ人口約130万人の島国です。同国では植民地時代から続くサトウキビのプランテーションに依存したモノカルチャー経済が1970年代まで続き、その後、繊維産業を中心とする輸出型工業と観光業の発展により、80年代・90年代と堅実な経済発展を遂げました。2000年代に入ると、国際金融サービス、ICT・イノベーション分野など産業の多角化を促進する経済政策を積極的に進め、アフリカ諸国を中心とした投資協定の締結も積極的に進めるなど、アフリカへの投資拠点・ゲートウェイとなることを目指しています。
世界銀行が毎年発表するビジネス環境ランキング(Doing Business)では、モーリシャスはアフリカ域内では最上位の常連となっており、直近2020年度のランキングでも同域内1位、世界190ヵ国の中でも13位と高位置に付けています。他方で、このようなビジネス環境の良さ、豊富なビジネス人材や治安の良さに裏打ちされたアフリカへの進出拠点としての地位は必ずしも日本企業に十分に認知されていません。
このため、本調査は、モーリシャスの具体的な魅力や、有望産業などをとりまとめて提言を行い、日本企業の同国への、そして同国を拠点としたアフリカ諸国への進出を促進することを目的に実施しました。調査の終盤では、調査結果を広く知ってもらうため日本企業へ向けて「モーリシャス投資促進調査報告ウェビナー」を開催しました、このウェビナーにはモーリシャス及び日本から約100人の参加があり、関心の高さが伺えました。