URBAN DEVELOPMENT AND TRANSPORT都市開発・運輸交通

課題認識

発展途上国の都市化は今後も続く事が予測されています。都市経済の発展や多様化が期待される一方、貧富の格差拡大や社会構造の変化、気候変動による災害等、都市を取り巻く課題も多数生じています。そのため、都市環境を健全に保ち、人・モノ・情報の輸送を円滑にする開発支援が求められています。これらを払拭するため、先進技術を活用したスマートシティ、地域住民や企業が参加するまちづくり、高齢化社会への対応など、我が国の知見・経験を活かしたサービスが今後ますます重要になるものと考えています。

IDCJの強み

発展途上国の開発では、計画の策定だけではなく、計画の具体化、インフラの運営・維持管理まで、一貫した支援と、それを持続的に支える人材育成が求められています。IDCJでは都市開発や運輸交通、物流に係るマスタープラン策定、フィージビリティ調査、技術移転、人材育成など、発展途上国の状況を鑑みた適切なサービスを提供しています。また、社会の持続的な発展のため、環境分野の取り組みも多く行っています。

主な実績

運輸交通

ナミビア国「国際物流ハブ構築促進プロジェクト」(フェーズ1・2)(JICA委託)

南部アフリカの大西洋岸に位置するナミビアは、天然の良港であるウォルビスベイ港と、そこから周辺諸国へと通じる国際回廊を有しており、物流ルートとして高いポテンシャルを持っている。IDCJは、2011年から2024年までナミビアの国づくりとして、経済開発、物流振興にJICAとともに、一貫して取り組んできた。

まず、最初の「経済開発支援調査に係る基礎情報収集・確認調査」(2011)で、物流立国構想を提案した。この提案は、ナミビア国政府の第4次国家開発計画の重点開発分野として取り入れられ、「2025年までにナミビアを国全体として南部アフリカ開発共同体における国際物流ハブにする」という目標が掲げられた。続く、「国際物流ハブ構築マスタープラン・プロジェクト」(2013-2015)では構想実現のシナリオと課題解決のためのアクションが提案された。シナリオとしては、ザンビアなどの内陸国向けトランジット物流需要の獲得を想定し、アクションとしては、国際物流企業拠点の誘致、輸送網の強化、統合国境管理の強化を重点項目として提案した。これを受けて、ナミビア国政府は国際物流ハブ構築マスタープランを実施することとし、その調整機関としてWBCG(Walvis Bay Corridor Group)を指名し、課題ごとにワーキンググループ(以下「WG」)(①物流ハブセンター、②戦略的マーケティング、③国境管理、④能力強化、等)を設置した。

「国際物流ハブ構築促進プロジェクト」(2016-2019)「国際物流ハブ構築促進プロジェクトフェーズ2」(2020-2024)では、前述のWGの活動を支援することで、マーケッティング戦略プランや、物流ハブセンター/港湾地区再整備コンセプト、統合国境管理コンセプトなどの具体化案を作成した。特に第2フェーズでは、2019年に完成したウォルビスベイ港の新コンテナターミナルの新たな取扱能力を活用するため、さらなる貨物量の獲得を目指す活動を支援した。さらに、遅れていた国境施設インフラの効率化や既存港湾内の物流動線の再編等についても支援を行った。

これらの結果、マスタープランの上位目標であった「2025年までにナミビアを国全体として南部アフリカ地域における国際物流ハブにする」については、概ね達成することができた。下図に示すように、ナミビアを通過する国際トランジット貨物量は大幅に増加し、2023年には2.16百万トンに達している。これは2016年の値の5.4倍である。

物流マスタープラン実施期間におけるウォルビスベイ港・ルーデリッツ港通過、国際トランジット貨物量2016-2023 (トン/年)

港湾ゲート調査風景(IDCJプロジェクトチーム、WBCG及びナミビア科学技術大学学生と共同)

カンボジア国「プノンペン公共バス運営改善プロジェクト」(JICA委託)

カンボジアの首都プノンペン都は、人口125万人(2012 年)を有するカンボジアの政治経済の中心地です。近年の経済発展を背景に登録車輛台数は2000年の62,000 台から2015年は365,000台に増加し、その結果、2001年に20km/hであった都市内の平均走行速度は、2012年には15km/hを下回り交通渋滞が深刻化しつつあります。交通事故も増加の一途をたどり、抜本的な交通改善施策が必要となっています。

2014年に実施した「プノンペン都総合交通計画プロジェクト(JICA委託)」では、2035年を目標年次とする総合交通計画(M/P)を策定しました。同M/Pでは、プノンペン都の将来人口予測に基づき、公共交通計画、道路網計画及び交通管理計画を策定し、公共交通網整備の短中期的な施策として、バス交通システムの導入を優先事業の一つとして提案し、1か月間路線バスの社会実験を実施しました。プノンペン都がこれを引き継ぎ、2014年にバス公社を設立し路線バスを運営していますが、予算上の制約からも十分な数の車両を調達できず路線拡大ができていません。また、バス公社は設立間もない組織であり、組織運営やバスの運行管理・維持管理能力等に問題を抱えていました。

カンボジア政府の要請を受けて、本プロジェクトは、プノンペン都バス公社をはじめとするバス関連組織の組織運営、運行管理能力、公共交通政策立案能力の向上、ならびに無償資金協力にて提供されるバス車両を活用し、プノンペンの公共路線バスサービスが安全かつ適切に提供されることを目的として実施しました。なお、2020年からはコロナ禍においても安全な公共交通提供への取組も行いました。

日本から無償供与されたバス
日本から無償供与されたバス

タイ国「未来型都市持続性推進プロジェクト」 (JICA委託)

タイは1980年代の急速な経済成長により中進国入りを遂げ、現在はどのように持続可能な社会を構築していくべきかを議論する段階にあります。第12次国家経済社会開発計画においては、持続可能な都市構築を重点課題としているものの、目指すべき都市の姿およびそれを達成するための具体的な方法論については十分に議論がなされていません。

タイは首都バンコクに人口約830万人を擁し、都市人口の約35%が集中する一極集中型国土構造ですが、バンコク以外の多くの都市は人口10万人以下の小規模都市となっています。これらの地方都市ではインフラ整備、居住環境保全、産業育成・雇用創出などの様々な都市課題を抱え、さらに日本と同様、高齢化社会へ移行しつつあります。しかしながら、地方自治体の権限、財源、人材には限りがあり、有効な地方戦略開発計画の策定および実施が困難な状況にあります。

このような背景を踏まえ、タイの地方都市における将来を見据えた未来型都市開発のコンセプトの確立、その実現のための事業実施メカニズム及び手法を策定し、持続可能な都市開発に寄与することを目的として、持続可能な都市開発実現のメカニズムとして、「持続可能な未来都市構想(Sustainable Future City Initiative: SFCI)」を提案し、以下の活動を2015年から実施しました。また、2020年からは新型コロナウイルス(COVID-19)の都市への影響等も協議しました。

ステージ1:タイの地方都市における未来型都市開発にかかる政策研究
ステージ2:モデル都市における開発計画の策定
ステージ3:タイの地方都市における開発計画策定・事業実施ガイドラインの策定・普及
ステージ4:持続可能な未来都市構想(SFCI)第二フェーズの実施
ステージ5:タイにおける未来都市構想の構築と普及

モデル都市(Phanat Nikhom)でのユニバーサルデザイン導入に関するワークショップ
モデル都市(Phanat Nikhom)でのユニバーサルデザイン導入に関するワークショップ

その他実績

都市開発・環境

運輸交通

物流

開発コンサルティング

株式会社 国際開発センター