ゴール4:質の高い教育をみんなに

全ての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進する。

ゴール4は教育に関するターゲットで構成されている。貧困削減を持続的に進める上で、教育は大きな役割を担う。全ての人々が質の良い教育に生涯を通じてアクセス可能となることが目指される。初中等教育から、就学前教育幼児教育)職業技術教育高等教育など全ての段階の教育が対象となっている。

教育、特に初等教育の普及はミレニアム開発目標(MDGs)の重点項目の一つであり、これまでも様々な施策が実施された。そのため、過去20年間で初等教育を受けられない子供の数は半減した。とりわけ人口規模が大きい中国とインドにおいて、目覚ましい成果があった。それでも2014年の時点で、世界で約6,000万人の子供が初等教育を受けられない状況にあった。

児童の就学率と世帯の貧困は相関関係がある。貧困世帯の子供は富裕世帯の子供と比べ未就学の比率が数倍高い。また、親の教育水準も子供の就学率に影響を与える。一般に貧困世帯の子供は低学歴になりがちであり、世代を通じて貧困状況が続いてゆくことになる。

ゴール4は4.1から4.cまでの10個のターゲットから構成される。ターゲットの4.1から4.3では、全ての子供が、初等・中等教育、就学前教育、技術・職業教育、高等教育を受けられるようになることが目指される。一方、4.4の焦点は若者や成人に対する技術・職業教育の提供である。4.5は格差がテーマであり、教育へのアクセスにジェンダーや障がいの有無によって格差が生まれないことが求められる。4.6では識字能力と基礎的計算能力、4.7では持続可能な開発のための教育が、全ての人に備わることが目指される。4.aから4.cは実施手段についてのターゲットであり、良好な学習環境の提供、技術・高等教育への奨学金、質の良い教員の確保が、それぞれ求められる。

ゴール4のターゲット

4.1 無償・公正・質の高い初等・中等教育を修了できるようにする
4.2 乳幼児の発達・ケアと就学前教育にアクセスできるようにする
4.3 高等教育に平等にアクセスできるようにする
4.4 働く技能を備えた若者と成人の割合を増やす
4.5 教育における男女格差をなくし、脆弱層が教育や職業訓練に平等にアクセスできるようにする
4.6 基本的な読み書き計算ができるようにする
4.7 教育を通して持続可能な開発に必要な知識・技能を得られるようにする
4.a 安全で非暴力的、包摂的、効果的な学習環境を提供する
4.b 開発途上国を対象とした高等教育の奨学金の件数を全世界で増やす
4.c 質の高い教員の数を増やす

用語

初中等教育

初等教育及び中等教育を指す。一般的に、初等教育は小学校で行われる基礎教育のことで、多くの国では5歳あるいは6歳から開始され、4~6年間程度行われる。他方、中等教育は初等教育に続く教育段階で、一般的には、前期中等教育と後期中等教育に分けられ、前者は中学校、後者は高等学校で行われる教育を指す。この段階は、多くの国で6歳あるいは7歳から開始され、5~6年程度行われる。 現在、世界の国々を見た時、一部の国を除き、初等教育はほぼすべての子どもが就学できるようになった。しかしながら、その修了率は地域によって大きな格差が見られることが課題となっている。他方、中等教育については、まだまだ就学率が低く、今後、全世界をあげて、その推進に取り組んでいく必要があると考えられている。

就学前教育

初等教育の前段階における教育を指すが、通常、「幼児教育」に含められることが多い。

幼児教育

初等教育が行われる前段階、すなわち、0歳から4歳、あるいは5歳までの子どもの教育を指す。通常、子どもの世話を中心とした保育と教育に焦点を当てた幼児教育とに分けられ、それぞれを担当する行政組織も通常は異なっている。例えば、我が国では保育を専門に行うのは「保育園」、教育を専門に行うのは「幼稚園」とされ、前者は厚生労働省、後者は文部科学省が管轄している。幼児教育は、(先進国を除くと)世界的に見て、きっちりとした制度として確立している国は少ないと言える。したがって、まだまだ幼児教育の重要性や意義が国内に十分に浸透していない面もあり、早期の制度確立が望まれている。

職業技術教育

普通教育に対して、ある職業的技能や技術の習得を目的として即戦力となる職業人を養成する教育を指す。通常、中等教育段階から導入されることが多い。世界人権宣言の第26条の1では、「技術教育及び職業教育は、一般に利用できるものでなければならない」と定められているが、そのためには、最新の機器や設備を導入して、企業及び社会全体からの要請に合致した技能・技術を習得させる必要があり、そのための設備投資などのコストは大きい。このため、世界の多くの国々では、その必要性は認識されながらも、なかなか同教育を積極的に推進、発展させていくことが難しいという状況に直面している。

高等教育

初等教育、中等教育に続く教育段階で、一般的に大学や高等専門学校、専門学校において行われる高度で専門的な教育を指す。通常、細かく専門分野に分かれており、ある専門分野においての教育課程を修了すると学位などの学術称号が授与される。高等教育は、時代や地域によっては、将来の国や社会を担うエリート養成という役割がある一方、近年、高等教育は個人の能力に応じ、すべての者に等しく開放されなければならないと国際人権規約によって規定されており、高等教育への進学率は上昇傾向にある。ただし、現在における高等教育への進学率は、費用がかかることもあり、先進国においても50%前後であり、開発途上国になると、その比率は非常に低い。

識字能力と基礎的計算能力

識字能力とは、文字を読んだり書いたりする能力を指し、基礎的計算能力とは加減乗除などの四則計算ができることを指す。識字能力と基礎的計算能力は、人間が社会において文化的な生活を営んでいく上で必要不可欠の最低限の能力とされており、すべての人々がこの二つの能力を習得できるように世界中の国々が取り組んでいる。通常は、初等教育、特に低学年(1~3年生)において、これらの能力養成が目指されている。現在、世界的に初等教育の普及が進んだことで、識字能力や基礎的計算能力をもたない人々の割合はかなり減少したと言われている。しかしながら、まだ一部の地域や国においては、これらの能力を十分にもたない人々がいることも事実であり、こうした人々をなくしていくことが現在の世界各国に課された使命とも言える。

持続可能な開発のための教育

環境、貧困、人権、平和、開発といった様々な問題を自らの問題として捉え、身近なところから取り組むことによって、それらの課題解決につながる新たな価値観や行動を生み出しながら、持続可能な社会を創造していくことを目指した教育活動を指す。言い方を変えれば、持続可能な社会造りの担い手を育む教育と言える。同教育においては、人格の発達や自律新、判断力、責任感などの人間性を育むという視点と他人との関係性、社会との関係性、自然環境との関係性を認識し、「関わり」と「つながり」を尊重できる個人を育むという視点をもって実施されることが重要である。そのために、環境、平和や人権など持続可能な開発のための教育(ESD)の対象となる様々な課題への取り組みをベースにしつつ、環境、経済、社会、文化の各側面から学際的かつ総合的に取り組むことが重要となる。

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