ゴール8:働きがいも経済成長も

包摂的かつ持続可能な経済成長及び全ての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する

ゴール8では、経済成長と雇用の観点から、持続可能な開発を実現するために達成すべき課題が整理されている。特に、労働環境、働きがい、ニートといった我々にも身近なテーマが多く取り上げられている。日本では少子高齢化が進んでいるが、世界的にみると若年人口の割合は高い。2015年の時点で25歳以下の若年人口は世界人口の42%を占める。だが、多くの若年層が十分な雇用機会を与えられていない。特に、中所得国では若年層の多くが就業や就学しておらず、職業訓練も受けておらず、いわゆるニートの状態に陥っている。

中小零細企業は若年層に大きな就業機会を与えるものであり、こうした企業の設立や成長を促すことが必要である。そのためには、特に金融サービスへのアクセス改善が求められる。携帯電話を通じた金融サービスの発展に伴い、これを利用する人口の比率は近年になって高まってきている。だが、いまだアクセスが困難な人々も少なくない。

ゴール8は8.1から8.bまでの12個のターゲットから構成される。8.1から8.4までは、経済成長や経済生産性、中小零細企業振興、環境悪化の防止に関する目標がそれぞれ提示されている。8.5から8.8までは雇用や労働環境についての課題であり、8.5では働き方改革につながる施策や、ハラスメント防止、同一労働同一賃金の原則などが焦点となる。8.6ではニート問題への対応がテーマになっている。そして8.7では強制労働や児童労働の禁止が求められる。日本企業であってもこうした問題とは無縁ではない。世界に展開するバリューチェーン上において、強制労働や児童労働が発生しているかを明らかにする必要がある。そのためにはCSR調達/持続可能な調達の体制を作ることが求められる。続く8.8では安全、安心な労働環境の提供が求められている。外国人労働者も含めて、適切な労働環境が提供されることを確実にしなければならない。

8.9では持続可能な観光業を促進すること、8.10は金融サービスへのアクセスを拡大することが目指される。実施体制に関わる8.aと8.bの両ターゲットでは、貿易、雇用に関する国際協力の強化と、若年層の雇用拡大のための世界協定の実施が、それぞれ課題として示されている。

ゴール8のターゲット

8.1 一人当たり経済成長率を持続させる
8.2 (多様化、技術向上及びイノベーションにより)高い経済生産性を達成する
8.3 開発重視型の政策を促進し、中小零細企業の設立や成長を奨励する
8.4 資源効率を漸進的に改善させ、経済成長と環境悪化の分断を図る
8.5 雇用と働きがいのある仕事、同一労働同一賃金を達成する
8.6 就労・就学・職業訓練を行っていない若者の割合を減らす
8.7 強制労働・奴隷制・人身売買を終らせ、児童労働をなくす
8.8 (移住労働者など全ての)労働者の権利を保護し、安全・安心に働けるようにする
8.9 持続可能な観光業を促進する
8.10 銀行取引・保険・金融サービスへのアクセスを促進・拡大する
8.a 開発途上国への貿易のための援助を拡大する
8.b 若年雇用のための世界的戦略とILO の世界協定を実施する

用語

働き方改革

日本が直面する少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少、働く人々のニーズの多様化などに対応すべく、人々が個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を選択できる社会を実現するための改革。2016年9月に内閣官房に設置された「働き方改革実現会議」により検討が進められ、長時間労働の是正、年次有給休暇取得の容易化、雇用形態に関わらない公正な待遇の確保等の内容を含む「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が2018年7月に成立した。

CSR調達/持続可能な調達

「CSR調達」とは、企業の事業活動において、製品・資材・原料などの調達にあたり、サプライヤーと協働して環境・労働環境・人権といった環境・社会課題に配慮を行い、サプライチェーン全体で環境や社会全体に与える影響に責任を持つという企業行動を意味する。「持続可能な調達」も同様に、組織が購入する製品及びサービスの自然・社会環境への被害を最小限にとどめライフサイクル全体で社会や環境に有益で持続可能となる調達活動を行うことを指す。SDGsにおいては目標12「持続可能な消費と生産」が設定され、企業だけでなく公共調達における持続可能性にも注目が高まっている。

SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS

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