ゴール13:気候変動に具体的な対策を

気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる

気候変動はこの世界の将来にとって最も重要な課題といって過言ではない。今日、天候の変化、海水位の上昇、異常気象など、世界の全ての地域ですでに気候変動の影響が顕在化している。その影響は、農業生産、飲料水の確保、生態系保全、エネルギー供給、インフラなどあらゆる分野に及ぶ。こうした分野への影響は、特に脆弱な生活環境に置かれている貧困層にとって深刻な被害をもたらす。ゴール13では、さらなる気候変動を阻むこと、そしてそれに起因する環境変化に耐える力を強化することが目指されている。

気候変動の大きな要因である炭素排出量は、今も増え続けている。地球温暖化に関する国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第5次評価報告書(2014年発表)では、これからの100年間でどれくらい平均気温が上昇するか、4つのシナリオを提示して予測が示されている。それによると、最も気温上昇の低いシナリオ(RCP2.6シナリオ)では、おおよそ2度前後の上昇、最も気温上昇が高くなるシナリオ(RCP8.5シナリオ)では、4度前後の上昇が予測されている。

残念ながら現在の世界の温室効果ガスの排出量の実情は、最も気温が高くなるシナリオに近い。パリ協定において目指されているように、気温上昇を2度前後に抑えるために、世界レベルで包括的な脱炭素化(低炭素社会)への移行が必要である。企業が各生産活動に伴う温室効果ガス排出量を算定するため、GHGプロトコルというガイドラインが作成されている。自社の事業所内、サプライチェーン上といったスコープごとにGHG排出量を把握することが求められる。気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)は、投資家が適切な意思決定を下せるように、企業に対して気候変動に対応した財務情報を開示すること要請している。投資家側にも、化石燃料や石炭関連の事業への投融資から撤退する(ダイベストメント)といった積極的な行動が求められる。

さらに、気候関連災害や自然災害に対して、我々の社会を強靭なものにしてゆくことも重要である。仙台防災枠組みに基づき、災害リスクを理解し、その管理のためのガバナンス体制を構築する必要がある。企業レベルでも、事故や災害などの発生に伴う事業中断を想定した戦略を立案する必要があろう。

ゴール13は13.1から13.bまでの5つのターゲットから構成される。13.1では、気候変動がもたらす災害に対処する能力を、全ての国々が持つことが目指される。そのために、13.2では気候変動対策を国々の政策や計画に盛り込むこと、13.3では気候変動に対処する人的、制度的な能力を強化することが求められる。続く13.aでは気候変動への取り組みを促進するための資金の動員の必要性が示される。そして13.bでは、気候変動の影響を被りやすい後発開発途上国、小島嶼開発途上国に対して技術協力を実施することが求められる。

ゴール13のターゲット

13.1 気候関連災害や自然災害に対する強靭性と適応能力を強化する
13.2 気候変動対策を政策、戦略及び計画に盛り込む
13.3 気候変動対策に関する教育、啓発、人的能力及び制度機能を改善する
13.a 国連気候変動枠組条約(UNFCCC) の先進締約国によるコミットメントを実施し、緑の気候基金を本格始動させる
13.b 開発途上国における気候変動関連の効果的な計画策定と管理能力を向上するメカニズムを推進する

用語

パリ協定

2020年以降の地球温暖化対策の国際的枠組みを定めた協定のこと。2015年にパリで開催された「気候変動に関する国際連合枠組み条約第21回締約国会議」(COP21)で採択され、2016年に発効した。「京都議定書」(1997年)の後継協定に当たる。世界の気温上昇を産業革命前の1.5~2度未満に抑え、21世紀後半には温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを目標にする。190以上の加盟国・地域が温室効果ガスの具体的な削減目標を申告し、5年ごとに目標を更新する。また、先進国は途上国への資金援助と協力の情報公開を義務付けられている。

脱炭素化(低炭素社会)

地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出量をゼロにすること。太陽光や風力などの再生可能エネルギーの活用を促進して、石油や石炭などの化石燃料からの脱却を目指す。パリ協定を受け、化石燃料依存の低減に焦点を当てた「低炭素化」に代わり、脱炭素化が世界的な潮流になっている。工場や発電所などで排出されるCO2を大気放散する前に回収して地下へ閉じ込める「CO2回収・貯蓄(CCS)」の技術や、排出量取引制度や環境税などを組み合わせた「脱炭素社会」への移行を促す政策手段も注目されている。

GHGプロトコル

世界資源研究所(WRI)と持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)との共同事業により、事業者が各生産活動に伴う温室効果ガス(GHG)排出量を算定するために作成されたガイドライン。

スコープ

GHG 算定のガイドラインである「GHGプロトコル」の中に定義されている排出量の呼び方で、排出量の範囲を示すときによく利用される。スコープ2排出量とは、他人から供給される電気や熱の使用に伴う排出量を示す。スコープ3排出量とは、企業が間接的に排出するサプライチェーンでのGHG排出量(製造、輸送、出張、通勤等)を示す。

気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)

2015年に金融安定理事会(FSB)によって設立された気候変動問題と金融安定化のための国際的なイニシアティブ。今後、世界が低炭素経済へ移行していく過程で、適切な資本配分が国際金融の安定化に不可欠であるという考えに基づく。低炭素経済への移行は、企業にとって二つのリスク(「移行リスク」と「物理的リスク」)と機会をもたらす。これを踏まえて、企業が気候変動に対応した財務情報を開示し、投資家が適切な意思決定を下すことにより、効率的な資源配分が実現化される。

ダイベストメント

投資(Investment)の対義語であり、すでに投資している株・債券等の金融資産の引揚げや、投融資事業からの撤退を指す。特に気候変動問題との関連においては、化石燃料に関連する資産を将来使用できなくなる可能性のある「座礁資産」と捉え、それらの企業価値に与える影響を認識し、化石燃料や石炭関連の事業への投融資から撤退する動きが始まっている。

仙台防災枠組み

2015年~2030年までの国際社会の防災に関する行動指針のこと。2015年に仙台で開催された「第3回国連防災世界会議」で採択された。「兵庫行動枠組」(2005年)の後継枠組みに当たる。1)災害リスクの理解、2)災害リスク管理のための災害リスクガバナンス、3)強靭化に向けた防災への投資、4)効果的な応急対応に向けた準備の強化とよりよい復興の4つの優先行動と7つのターゲットから構成されている。

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