ACTIVITY REPORT再生支援プロジェクトモニタリング報告(2013年12月)

訪問者:川越 洋介
訪問期間:2013年12月6日~10日(5日間)

こんにちは。IDCJアンコールの森支援チームの川越洋介です。IDCJでは、2005年から地元NGOのJSTと連携し、カンボジアのシェムリアップ州アンコール遺跡郡周辺の地域で『アンコールの森』再生支援プロジェクトを実施しています。当初は地域の主要道路や遺跡付近に植樹をしていましたが、数年前から地域の小学校で植樹とともに環境・衛生教育を行うようになり、少しずつ活動を拡大しています。現在、私たちは、2013年10月に開校したアンコール・トム西区のバイヨン中学校で環境教育ワークショップを実施したり、校庭・敷地で植樹をしたり、植樹した木を家畜から守るための校庭外周の柵を製作し、バイヨン中学校における緑化活動を支援しています。

今回の現地モニタリングの目的は以下の通りです。

1. バイヨン中学校での活動視察
2. 過去にIDCJが支援した小学校のフォローアップ
3. みんなで楽しむ雑炊会、そしてアフリカの国についての勉強会  

現地モニタリング報告その1 バイヨン中学校での活動視察

1.バイヨン中学校って何?

 アンコール・トム遺跡の近くに位置するアンコール・トム西区では、小学校が比較的多い一方、中学校の数が極端に少ないため、約6割の子どもたちは小学校卒業後に進学を断念していました。そこでJSTは、行政・賛同団体、個人、地元住民の協力を得て、近隣5小学校の中学校への進学率を上げることを目的とした「みんなで中学校をつくろう」プロジェクトを開始し、バイヨン中学校を建設しました。同校は2013年10月に開校し、同年12月末現在、135名の中学1年生が在籍しています。

2.バイヨン中学校で環境教育ワークショップを実施しました!

環境教育ワークショップは2010年から同地区の小学校で実施してきました。ワークショップでは、JSTのチア代表と地元の中学生、高校生を中心としたボランティアグループ(通称青年グループ)が、保健衛生の改善、森林保護等の重要性を子どもたちに説明します。青年グループは一方的に説明するのではなく、クイズを出したり、子どもたちに意見を求めながら進めたり、模造紙にクメール語でポイントをまとめ理解を促したり、テーマごとに画用紙に絵を書いたりすることで、子どもたちが関心を持てるよう工夫しています。

今回、バイヨン中学校開校後初めて同校の在校生を対象に、「保健衛生改善」と「森林保護」をテーマにワークショップを開催しました。青年グループの工夫もあり、子どもたちは時に画用紙の絵で笑いつつ、積極的に発言しながら意欲的に参加していました。「保健衛生改善」では、身体を毎日洗い、清潔に保つことで菌の侵入を防ぎ病気を予防する重要性や、歯磨き、手洗い、衣類の洗濯の重要性等について話し合いました。「森林保護」では、森林やそのほかの環境を守る重要性について話し合い、その後、青年グループは、苗木のメンテナンス方法などについて説明しました。 

青年グループは、過去にバイヨン中学校近隣の5つの小学校で、同様のワークショップを開催しています。そのため、子どもたちの多くはワークショップの内容に精通しており、今回のワークショップではその知識を再確認し、自ら考えて発言をしている様に感じました。 JSTのチア代表は「自然は人が生きる上で絶対に不可欠。今それを実感することはとても難しい。経済発展を急ぐ人が多すぎるが、最近になり、少しずつ自然環境の重要性を理解する人が増えてきた。」と力説します。

ワークショップ中に意見を求められた子が、「勉強を続けるためには校舎を守る必要があります。木は校舎を守ってくれるので、植えた木を大切に育てることは重要です」と訴え、その場にいた全員が拍手を送る場面がありました。2010年から実施してきた環境ワークショップを通して、子どもたちの環境に対する意識が少しずつ変わってきている様子を垣間見た気がします。

3.みんなで校庭に植樹をしました!!

環境教育ワークショップ後、子どもたちは校庭の前庭に10本~15本のコキの苗木を植樹しました。植樹予定地には予め穴が掘ってあり、苗も準備されています。穴に苗を植え、肥料を混ぜて土を均したら完了です。子どもたちの多くは植樹の経験があるのか、青年グループやチア代表が細かい指示を出すまでもなく、あっという間に作業を進めていきます。先生の指導のもと、自分たちで水やり当番も決め、大切に木を育てています。

植樹する子どもたち、青年グループとチア代表

4.牛に食べられないように校庭外周には柵を設けます。

牛は、地域の人々が生活を営む上で重要で欠かせない家畜ですが、牛の唾液が付着することでその後苗木が順調に成長しなくなったり、牛が苗木を食べてしまうこともあります。そのため、学校の敷地に牛が侵入しないように、前庭と裏庭に柵を設置しています。裏庭には既に設置しており、前庭にもこれから設置する予定です。

現地モニタリング報告その2 過去にIDCJが支援した小学校のフォローアップ

バイヨン中学校に進学することが想定されている近隣の5つの小学校のうち2校と、別の中学校に進学する卒業生が多い小学校1校を訪問しました。IDCJは過去にこれらの学校に書籍や本棚を寄付したり、環境教育ワークショップを開催したり、校庭や周辺の敷地に植樹をしています。

1.コックルール小学校 多くの子供たちがバイヨン中学校に進学します!

寄贈された本棚   2012年に東京新橋ロータリークラブ、東京レインボーロータリークラブにより寄贈された本棚は現在も大切に使われていました。校長先生に話を伺ったところ、校舎周辺で砂ぼこりが発生することも多いので、本を綺麗に保つことが出来て嬉しいとのこと。本は休み時間に子どもたちが自主的に読むのではなく、授業で先生が読み聞かせています。 また、多くの卒業生はバイヨン中学校に進学する予定で、子どもたちが進学を断念する必要がなくなったことを先生も嬉しそうに話していました。

コックルール小学校の校長先生と寄贈された本棚

 一方、課題もいくつかあります。2011年に校庭に植えたマンゴーの木は2012年の洪水の被害を受け、今後の成長はあまり期待できないことを校長先生は嘆いていました。また、2011年に実施された環境教育ワークショップの際に当時の在校生が習ったことが下の学年に受け継がれていないことを問題として挙げていました。環境ワークショップに参加した先生から子どもたちにもう一度話をしてもらうなどの対応が必要で、私たちからも先生方に働きかけたいと思います。

2.コックベイン小学校 世代を超えて環境教育を続けてほしい。

2011年に校舎を囲む塀に沿って植樹した苗木が順調に成長していることを確認しました。この学校でも本は授業で読み聞かせており、東京新橋ロータリークラブ、東京レインボーロータリークラブにより2012年に寄贈された本棚は大切に保管されていました。また、卒業生の多くはバイヨン中学に進学する予定で、校長先生曰く、「中学校に進学する」という目標ができたことで、授業を欠席する子も少しずつ減っています。

一方、コックベイン小学校でも2011年に実施した環境教育ワークショップの内容が在校生に伝わっていないように感じました。同校ではワークショップをきっかけにゴミ箱を設置するようになり、現在も各教室に設置されています。しかし、校庭には校舎近くの売店で購入したお菓子のプラスチック包装等、自然に還らないゴミが散らかっていました。卒業生に話してもらったり、先生も交えて子供たちの間で自然環境の重要性をもう一度話し合ったりする必要があると思いました。私たちもできる限り小学校を訪問し、そのきっかけを作りたいと思います。

3.コックチョン小学校(コックチョウこうべゆめ小学校)

2011年に植樹した木が順調に成長していることを確認しました。生徒数は約600名で、アンコール・トム西区のバイヨン中学校進学対象5校に比べると規模がかなり大きく、近くに中学、高校があるため進学率も高いです。学校周辺の家屋もバイヨン中学校周辺より頑丈な材質で出来ていました。

現地モニタリング報告その3 みんなで楽しむ雑炊会、そしてアフリカの国についての勉強会

1.雑炊会 みんな、栄養満点の雑炊をおなか一杯食べました!

JSTでは植樹活動等の機会にあわせて、地域の小学校やコミュニティセンター等で子どもたちへの栄養補給を目的とした雑炊会を開催しています。雑炊会では、結婚式やお祭りで料理を作っている村の女性たちの協力を得て大きな鍋で雑炊を作り、子どもたちに振る舞います。

モニタリング期間中はバイヨン中学校で開催されました。在校生を対象に開催された雑炊会でしたが、地域の子どもたちも沢山集まっていました。アンコール遺跡郡周辺の地域に暮らす人々は十分な栄養を摂取できないことが多く、バイヨン中学校でも多くの子どもたちが朝食を食べずに登校しています。

雑炊には鶏肉、カボチャ、キャベツ、イモ、ネギ、ホウレンソウ類の野菜等が含まれています。同地域では雑炊に野菜を入れる習慣はないようですが、子どもたちは喜んで何杯もおかわりをしていました。

2.IDCJ職員による交流会・勉強会 アフリカの国、ガーナとトーゴってどんなところ?

2010年から、私たちIDCJ職員がモニタリングで現地を訪れる際には、青年グループ向けの交流会・勉強会を開催しています。過去には「東ティモールの改良かまど」「投資とは何か」「ブラジルとラテン音楽」等、様々なテーマで実施してきました。

今回はバイヨン中学校の在校生を対象に、「ガーナとトーゴの日常生活」と題し、主に衣食住と教育について30分程話をしました。2010年にアンコール・トム西区の小学校で調査を実施した際には、世界遺産のアンコール遺跡群が近くにあるにも関わらず、多くの子どもたちがその存在を知らないことが判明するなど、自分たちの生活の外の世界に関する知識がかなり少ないことが発覚しました。このような事情を踏まえ、今回は外国への理解や興味を促進することを目的に、ガーナとトーゴの日常生活について過去の滞在経験をもとに話しました。 

発表の様子

静かに聞く、というよりはパワーポイントのスライドが変わるごとに隣のお友達と少しおしゃべりをしながら聞いており、初めて見る風景や食べ物など、自分たちと異なる生活に興味を持っていました。

3.最後にコミュニティセンターを訪問してきました!

毎週日曜日にJSTがフリースクールを開校しているアンコールクラウ村コミュニティセンターを訪問しました。フリースクールでは主に地域の小中学生を対象にパソコンの授業と日本語の授業を無料で開講しています。パソコン教室開講のために必要な電力はソーラーパネル2枚で発電しているため一度に多くのパソコンを起動することは難しい一方、授業はとても人気です。

訪問時には既に小中学生対象の授業は終わっており、前日に環境ワークショップで発表をしていた青年グループが日本語の授業を受けていました。日本語の講師は、JSTのカンボジア人スタッフです。

今回のモニタリング期間中はJSTの皆様に大変お世話になりました。どうもありがとうございました。また弊センターの活動にご支援をいただいている緑の募金、ご寄附いただいている皆様にもこの場をお借りして、改めて御礼申し上げます。引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。

活動報告

アンコールの森 再生支援