GRI・GRIスタンダードについて

About GRI and GRI STANDARDS

GRIとは

GRIはGlobal Reporting Initiative(グローバル・レポーティング・イニシアティブ)の略です。本部をオランダのアムステルダムに置くサステナビリティ報告書のガイドラインを制定している国際的な非営利団体です。GRIは、持続可能な経済への変化を促進し、管理することに貢献するような、サステナビリティ報告書の標準的な慣習を作ることを目的としています。

ここで、持続可能な経済とは、企業の長期収益性が、経済、環境、社会分野の様々な開発課題と両立して実現される姿を想定します。企業や組織が持続可能に発展するには、自らの活動のパフォーマンスが経済、環境、社会にどのようなインパクトを与えるかを考慮する必要があります。

GRIによるサステナビリティ報告書の枠組みを適用することにより、企業がこうしたインパクトを測定し、分析し、解釈し、これを広く伝達することが可能となります。これにより、企業の透明性と説明責任が確保され、ステークホルダーとの信頼関係が構築されます。

GRIスタンダードとは

GRIは2000年6 月に、サステナビリティ報告書のガイドラインの初版(G1)を公表しました。その後、基本的に3 年ごとに見直しを進めており、2002年8 月にはガイドラインの第2 版(G2)がヨハネスブルグでの「持続可能な開発に関する世界首脳会議」で公表されました。2006年10月はガイドライン第3 版(G3)が、2013年5月には第4版(G4)が発表されました。

そして2016年の10月に現行のGRIスタンダードが発行されることになりました。GRIはガイドラインの初版を発行して以来、当時、存在していなかったサステナビリティ報告書が普及するようになりました。現在はGRIの分析枠組みは、数多くの企業や組織に活用され、事実上、デファクトとしての役割を果たしてきました。

今日、非財務情報はサステナビリティ報告書の中で義務として開示が求められる時代になりつつあります。非財務情報の開示を、財務報告での情報開示ように、確固たる標準的な基準に沿って行うことが必要となります。こうした時代の要請に応えるため、GRIはガイドラインをGRIスタンダードとして再編したと考えられます。

GRIスタンダードの普及により、サステナビリティ報告書を作成する枠組みの標準化が、世界で一層進むことが期待されています。

GRIスタンダードの特徴

GRIスタンダードは世界で最も広く採用されている非財務報告の枠組みです。企業の持続可能性に関するパフォーマンスを報告し、透明性と説明責任を確保することに役立ちます。世界の大手企業の上位250社のうち、75%がGRIスタンダードを利用してサステナビリティ報告書、CSR報告書、ESGレポート等を発行しています。GRIの枠組みは、Bloomberg、NASDAQ、Reutersなどの主要な金融情報機関が、企業の環境、社会、ガバナンス(ESG)情報を分析するために使用しています。

2015年に国連サミットでSDGs(Sustainable Development Goals : 持続可能な開発目標)が合意されてからは、企業がSDGsへのコミットメントを整理し、そのパフォーマンスを報告することが求められています。GRIは国連グローバルコンパクトと共同で、GRIスタンダードを利用したSDGsコミットメントの測定と報告の手法を開発しています。

SDGsに取り組んでいる場合、あるいは自社の持続可能な開発計画を実施する場合、GRIスタンダードは、パフォーマンスの分析ツール、報告枠組みとして大いに活用されます。

ISO26000との関係

日本企業の中には、ISO26000に沿ってCSR報告書、サステナビリティ報告書等を作成してきたケースが多いです。GRIはISO26000の準備段階から、ステークホルダーの一員として起草に参加してきました。2011年9月にはISO(International Organization for Standardization:国際標準化機構)とGRIの両者で覚書(MoU)を取り交わし、持続可能な開発に向けた協力を推進することを確認しています。

そのため、GRIスタンダードで取り上げるテーマには(前身のG4も含め)、ISO26000と共通する部分が少なくありません。特に、マテリアリティ項目の特定や優先度付けのアプローチ、あるいはステークホルダー包摂やサステナビリティの解釈など、GRIスタンダードとISO26000には共通する部分が多々あります。

GRIスタンダードとISO26000の大きな違いは、報告書で開示すべき事項が具体的に示されているかどうかです。ISO26000はいわゆる原則主義であり、指標の選択などを企業側が柔軟に行うことが想定されています。一方、GRIスタンダードでは、非財務情報の報告の「標準化」が目論まれているため、一般開示事項、マテリアル項目のそれぞれに指標等の報告開示事項が具体的に示されています。

ISO26000に沿ったCSR戦略や事業について、その意義や成果を概念的に説明するだけでは十分ではなくなりつつあります。ステークホルダーによる客観的な分析や評価に耐えるためには、国際的な標準に沿って客観的なデータや情報を集めることが不可欠です。事前に適切な指標や開示事項を設定し、定期的にインパクトを計測する必要があります。そして、時系列で進捗をモニターし、他の組織のパフォーマンスと比較し、これらを報告することが求められます。

こうした一連の作業を進めるためには、GRIスタンダードに示された方法論を採用し、サステナビリティ・レポーティングに向けた体制を整えてゆくことが適切と考えられます。

SASBスタンダードとの違い

非財務情報の開示の枠組みは、GRIスタンダードだけではありません。GRIスタンダード並んで、米国のサステナビリティ・アカウンティング・スタンダード・ボード(SASB)が作成したSASBスタンダード(Sustainability Accounting Standards)があります。

SASBスタンダードは2017年10月に暫定版が公開され、パブリックコメントを受け付けたのち、正式化されたものです。非財務情報の開示方法について示している点でGRIスタンダードと似ていますが、次のような違いがあります。

SASBスタンダードGRIスタンダード
対応するニーズ投資家を含む市場関係者のニーズ従業員や地域社会を含む多様なステークホルダーのニーズ
分析の対象財務的インパクトが大きい非財務情報経済、環境、社会へのインパクトが大きな非財務情報
汎用性全79の業界別に個別のスタンダード全業種に共通のスタンダード
マテリアリティ特定方法業種別のマテリアリティが事前に設定企業が自社のマテリアリティを特定
マテリアリティの概念米国最高裁の判例に基づき定義各社の判断にゆだねられる
使われ方米国の会計制度に組み込むことを志向利用は自由裁量

GRIスタンダード・SASBスタンダードとも非財務情報の開示の標準化を進めるために提案された枠組みであることは共通しています。しかし、「誰のために、何を目的として非財務情報を開示しているのか」という立ち位置がGRIスタンダードとSASBスタンダードでは異なっています。

SASBスタンダードは、あくまで投資家の情報ニーズに応えることが大きな目的であるように見えます。同業種内で企業ごとにマテリアリティがバラバラに特定されていたら、比較分析が難しくなります。あらかじめ業種ごとにマテリアリティが指定されていれば、分析する側には大変に好都合です。報告する側もマテリアリティ特定に悩む必要はなく、ただ求められる情報を提示すれば済みます。SASBスタンダードでは、企業の非財務情報についての投資家の分析を効率的にすることが狙われており、あえてそれ以上の役割や便益を追及するものではないように思えます。

一方GRIスタンダードでは、マテリアリティは企業自らが特定すべきものになっています。ステークホルダーとのエンゲージメントを通じて、企業がそれぞれマテリアリティを特定することになります。マテリアリティの特定の原則や、そのアプローチについて詳細な説明があります。マテリアリティの特定に際しては、企業活動の経済、環境、社会へのインパクトが主要な決定要因となります。

GRIスタンダードがSASBスタンダードと異なるのは、企業の財務パフォーマンスへのインパクトではなく、経済、環境、社会へのインパクトが重視されることです。ここでは、非財務情報を開示する対象は、投資家だけではなく、地域社会や取引先、従業員等を含む多様なステークホルダーになります。多様なステークホルダーとエンゲージメントを重ねることにより、企業の持続可能な開発への方向性が定まります。そして、それを報告するのがサステナビリティ報告書ということになります。

つまり、GRIスタンダードが目指すのは、経済、社会、環境の持続可能な開発であり、企業はそれに参画することで自らのサステナビリティを追及できるという解釈になります。

GRIスタンダードに基づくサステナビリティ報告書は、投資家ニーズに応えるためだけに作られるものではなく、情報公開や説明責任の確保を主たる目的とするものでもないです。企業のサステナビリティ戦略を作成するための重要なツールという位置づけになります。これがGRIスタンダードとSASBスタンダードとの本質的な相違点であるように見えます。

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